カリグラフィってたくさん書体があるけど、一体どの書体から学べば良いんだろう?
これって永遠の(?)テーマのようにも思えますが、カリグラフィを数年間勉強してきた自分が思う、初心者が学ぶべき書体について現時点で思うことを書いていきます。
個人的な考察ですので全てが正しいか分かりません。
またこの記事は先が平らなスクエアニブで書くカリグラフィ書体についての話です。先が尖ったポインテッドペンで書く書体(カッパープレートやラウンドハンドと呼ばれている書体)は含まれませんのでご注意くださいませmm
初心者が最初に学ぶべき書体はファウンデーショナル体

いきなり結論ですが、現代のカリグラフィ初心者が最初に学ぶべき書体、それはファウンデーショナル体なのでは?と思っています。
もちろんカリグラフィを学ぶ用途は人それぞれで、それによって学ぶべき書体も変わってくるかもしれません。カリグラフィをやり始めるきっかけって人によってそれぞれですし、例えばこの書体が素敵だからこれが書きたい!と好みで決めるのも全然アリだと思います。実際に自分もそんな感じだった気がしますね。
でももしカリグラフィというものとある程度長く付き合っていきたいと考えているなら、繰り返しになりますが最初はファウンデーショナル体からが良いんじゃないかな?と感じます。
その理由を考察していこうかと思います。
カリグラフィの基本はローマン体?

カリグラフィの起源について、有名なトラヤヌス記念柱の台座に掘られたローマンキャピタル体のフォルムがよく紹介されています。この文字をカリグラフィの始まりと定義して話を進めると、このローマン体の形が全ての文字の骨格になっていると思います。
カリグラフィにはいろんな文字があります。イタリック体、ゴシック体(ブラックレターまたはオールドイングリッシュ)、ラウンドハンド(エングロッサースクリプト・カッパープレート)、ロンド体、アンシャル体、カロリン体、、、etc。
あげればキリがありませんが、これらは全てローマン体を元に発達した書体と言って良いように思います。早く書けるように形が変化して行ったり、経済的な理由で文字を変化せざるを得なかったりと理由はさまざまらしいんですが、とにかく色んな書体に枝分かれしていて初心者にはどの書体を選べば良いのか良く分かりません。
基礎であるローマン体を最初に学ぶべき、しかし・・・
そう考えると最初に学ぶべき書体は全ての書体の始祖の存在であるローマンキャピタル体だという結論になるのですが、ここでややこしいのが、ローマンキャピタル体という書体は初心者向きではないように思います。具体的にいくつか課題があると感じていて、それが以下です。
- 石に刻まれた文字を紙に書く難易度の高さがある
- セリフが文字の形を複雑にしている
- 大文字しかない
上記3つにざっくりまとめてしまいましたが、もう少し詳しく説明していきます。
石に刻まれた文字を紙に書く難易度の高さがある
紙って昔はなかったらしいんですね。紙は東洋発祥と言われていて西洋に伝わるのは少し後だそうです。なのでこの時代の文字や絵は、石に刻まれていたと考えられます。
カリグラフィの文字って最初から紙に書くように作られた文字ばかりではなく、最初は石に刻まれていたり、銅板を削って作った印刷の版だったりします。それらをペンとインクを使って紙に書けるようにしたりしたものだったりするわけです。
ローマンキャピタル体もまさにそれで、そこがこの書体の難易度を上げている部分かと思います。
セリフが文字の形を複雑にしている
石に刻まれているこの書体を複雑にしている理由のひとつに「セリフ」があります。
セリフとは文字の先についたヒゲのような細いパーツのことです。これは陽の光によって石に彫られた文字に影が落ちる際に、太陽の位置次第で影の形が変わって文字が見えずらくなることを防ぐためにつけられているものだと言われています。セリフ部分にバチッと影が落ちて文字が見やすくなるらしいんですね。そういった意味でついてるそうです。
機能性だけを考えれば紙に書く場合はこのセリフはいらないので、初心者はまずはセリフを外して書いて良いように思えます。
大文字しかない問題
ではこのセリフを外したローマンキャピタルを学べば良い、ということになりますがローマンキャピタル(ローマの大文字)はその名の通り大文字しかありません。
小文字はもう数百年後に生まれるのですが、この時代はすでに文字は紙に書かれており、文字の形はローマン体から少し変化しています。大文字と小文字は別々の環境で生まれている、ということになります。現代の僕たちから見ると少し複雑な印象ですね。
現代人はファウンデーショナル(=基礎)体から学ぶのが良い?
上記の問題を解決し、初心者が学ぶために作られた基礎的な書体がファウンデーショナル書体なのではないかと思っています。

先が平らなスクエアニブで書く写本時代の文字は、しばらくの間ヨーロッパの人たちの間でも使われなくなり、数百年くらい忘れられていたそうですが、ウィリアムモリスのアーツアンドクラフツ運動なども相まって復活する流れになったようです。その流れでイギリス人カリグラファーであるエドワード・ジョンストンという人が、20世紀初頭にほぼ使われなくなっていた写本時代のカリグラフィを研究して現代人にも分かりやすく示したと言われています。
このエドワード・ジョンストンは最初の小文字体であるカロリン体を良く研究したと言われていて、8年ほどかけて写本時代の散らばった書体を整理したそうです。とにかく大文字はローマンキャピタル体、そして小文字はカロリン体を参考に骨格を分析して現代人用に作られた基礎書体、それがファウンデーショナル体なのではないかな、と思っています。
エドワード・ジョンストン本人に直接聞いたわけではないのでなんともですが、現代人である僕たちは、20世紀初頭にまとめられたこの書体に従うのが良いのでは、というのが現段階での考察です。
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