スペンサリアンスクリプトは、19世紀後半頃のアメリカ全国で筆記文字の標準スタイルとして使われていたと言われている書体です。
初期アメリカではヨーロッパから伝えられたラウンドハンド筆記体が少しずつ学校教育でも教えられていたと言われています。しかし簿記などのシステムが導入され始めた記帳や、様々な書類作成など企業内で発生する業務に対しての速記性、実用性がなく、ビジネスシーンに対応するライティングの技術が求められていました。
イギリスの習字家によって考案されたランニングハンドと呼ばれるラウンドハンド筆記体を早く描くための技術は、アメリカで一番最初にビジネスカレッジを作ったとされているベンジャミン・フォスターの指導によって少しずつアメリカに浸透し始めていました。この流れを受けてアメリカの習字家たちは、ビジネスシーンの需要に対応しうるより実用的なライティング術の考案に思案していたと推察されます。
アルビン・ダントンやプラット・ロジャース・スペンサーといった習字家によって実用的に設計されたスペンサリアンスクリプトは19世紀後半頃から第一次大戦前まではアメリカのビジネス用習字として標準化され、公立学校の授業にも導入されたと言われています。
ストロークやペンワークについて
ペンで描く装飾絵柄 オフハンドフローリッシュについて
オフハンドとは「無造作に」「格式張らない」というような、あまり決めすぎずに自由に線を引くという意味あいがあると推察されます。
フローリッシュは装飾線を意味しているので、オフハンドフローリッシュはある程度自由に描く装飾線で構成された絵柄ということになりそうです。
この技術は18世紀以前のヨーロッパの印刷物にも見ることができますが、カリグラフィがアメリカに渡ってペンマンシップというビジネスライティングに変化する過程でさらに発展してきたような印象が強いです。
このようなオフハンドフローリッシュと呼ばれる絵柄がビジネスシーンで使われたかというと、書類作成や記帳などの業務ではあまり使われなかったと言われていて、主にエングロスで使われていたと推察されます「エングロスについてはこちらの記事を参照」。具体的には卒業証書や修了書などのタイトル部分にブラックレター書体と一緒にレイアウトするなどといった使い方がよくみられる印象です。
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