
モダンデザインの父と言われるウィリアム・モリス。知ってる人も多いのではないでしょうか?
19世紀くらいに活動していて、美しい装飾の壁紙や絨毯なんかを作った人として有名ですね。
モリスの思想や活動は現代の日本人にとっても参考になる内容だと個人的には思うので、ぜひウィリアムモリスについて知ってほしいと思って記事を書いています。
ウィリアムモリスってどんな人なんでしょうか?「アーツアンドクラフツ」という思想・運動を知ることでモリスがどんな人か知ることができます。
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アーツアンドクラフツ運動とは?

アーツアンドクラフツって??
アーツアンドクラフツ運動って何でしょうか?
ざっくりひとことで言うなら、
という運動ですね。
商品を利益優先で安価に大量生産するのではなく、人間が自然から受ける直感的に美しいと思う手装飾を届けることこそが、本当の意味で民衆の生活を豊かにするんだ、というようなことです。
モリスは生涯を通じてこの事を訴え続け、また実際に美しいプロダクトやインテリア商品を作り出しています。
またマルクス主義者で利益優先の資本主義を批判する思想も持っていました。
社会主義派なんですね。
なんでモリスがこういう主張をするのかというと、理由は以下です。
産業革命によってあらゆる物が利益優先で大量生産されるようになった

産業革命
ヨーロッパでは工業製品やインテリアなどは職人の手で丁寧に美しく作られていた時代がありましたが、17世紀頃からはいろんな商品が工場で大量生産していこうという流れが始まります。
いわゆる産業革命というものですね。
機械化することで安価に、そして大量に商品を作ることが可能になりましたが、モリスはこれを批判して以下のような事を訴えています。
芸術には民衆の暮らしを豊かにし、生活を向上させる教育的な役割がある

商品やインテリアは美しくなければならない

芸術教育には生活を豊かにする大事な役割がある
モリスの言葉を引用しています。
効率を重視してスピーディーに商品を作った方が利益は増える。しかし安価で粗悪な商品は、本当の意味で人々の暮らしを豊かにしない。
そして実際に手を動かして商品を作る側の人間もただのオペレーターになってしまい、ひとりのプロとしての人間の尊厳が奪われてしまう。
要は商品を"作る側”も"受け取る側”も誰も幸せにならない、という主張ですね。
このことを憂いたモリスが、商品を工場で大量生産するべきではない。中世のような手工芸に立ち返って、本当に優れた商品を通じて芸術を民衆のために届けるべきだ、として始めたのがアーツアンドクラフツという運動なんですね。
モリスが目指したユートピア

講演活動を行っていたモリス
モリスは公演活動をたくさん行ってアーツアンドクラフツの思想を訴え続けたそうですが、資本主義の流れは止められず、実際のところ改革は難しかったそうです。
ほとんどの人が効率よく利益を上げる方を選んだという事ですね。
ひとつひとつ時間をかけて物を作り上げると言う事は大変なことでもあるので仕方ないことなのかもしれません。
労働を強いられることのない理想社会を夢見て

理想社会を夢見て
モリスは次第にこのままでは芸術を伝えることは無理なのでは?と思うようになり、その原因は政治にあると考えて、次第に資本主義を否定して社会主義派になっていったみたいですね。
社会主義とはドイツの経済学者カール・マルクスが唱えた、貧富の差を無くして全ての人が平等に生きれる社会にしようという思想です。
芸術が一部の人にしか届かず、民衆の暮らしが豊かにならないのは資本主義が根底にあるから、ということですね。
モリスは誰も強制的な労働を強いられることなく、物に価格がなく貨幣も存在しない理想社会を夢見ていたそうです。
まとめ
ということでウィリアム・モリスという人がどんな考え方を持って活動していたかをまとめてみました。
最終的にモリスの思想は届かず、現代でも資本主義社会が続いています。
最近ではITの波もきて、効率化の流れはさらに加速して行っていますが、僕自身はこのウィリアムモリスの思想に共感する部分が大きいです。
現代でもモリスのような思想を持って商品を作っている人ももたくさんいると思うのですが、効率化を重視して生産し、発信力の高い人たちに埋もれて行っているように感じます。
資本主義が悪い、かどうかはわからないのですが、芸術が人の暮らしを豊かにする、そして豊かにするための教育的な役割を持つという考え方は大事だなと思っています。
こういう考え方が日本でも浸透していくと良いですね。