19世紀最も活躍したポストカード画家、カタリーナ・クレインってどんな人?

19世紀のポストカードやグリーティングカードの絵柄って素敵ですよね。で、それらを検索していると、ピンタレストなんかにはカード用に描かれたであろうたくさんの植物画が掲載されているんですよね。その中でもひときわ目を惹く絵があることに気づきました。

精密な描写ながら、無駄な筆の動きがいっさい無いような描き方なんですよね。画像を見て貰えばわかると思いますが、このような絵です。

なんとも言えない独特なタッチ

なんとも言えない独特なタッチ

この絵は誰が描いたのでしょう??

この絵は誰が描いたのでしょう??

このタッチの絵がたくさんあるんですよね、気づいたらこのタッチの絵に魅力を感じてwebから収集していました。これは誰が描いた絵なんでしょうか? まあ19世紀頃のカード絵を描いていた数いる作家のうちのひとりだろうから、名前はわからないな~と勝手に思っていましたが、不思議なもので他の調べ物をしている時に偶然その作家名を知ることができました。

カタリーナ・クレインという女性画家だそうです。

Catharina Klein/カタリーナ・クレイン

Catharina Klein/カタリーナ・クレイン

ルネサンス期の有名な画家たちに比べると、19世紀の商業画家は比較的情報が少ないことが多いように感じるのですが、web検索でたどり着いたという事は、ある程度の評価を受けていた画家さんなのかな?という印象です。実際に目に残る素敵な絵柄ですね。

というわけで、この素敵な19世紀画家、カタリーナ・クレインについてまとめてみました。

1861年生まれのドイツの画家

生まれは東プロイセン、という場所だそうです。位置的には現在のロシアの一角あたりらしいですが、この地域は戦争によっていろんな国の領土になっていて、現在はポーランド、ロシア、リトアニアに属しているという事みたいです。

その後ドイツのベルリンに移住しているみたいですね。そしてそのベルリンで美術学校に通ったみたいです。ちゃんとした美術教育を受けているんですね。まあ画力を見れば当然といえば当然かもですが、美術の学校に通えるくらいですから比較的裕福な、中・上流家庭に生まれたんですかね?

とにかく基本的にはドイツで活動した画家ということみたいです。「Journal des roses / ローズダイアリー」(※1)や「Rosen-Zeitung / ローゼンツァイトゥング」(※2)といった雑誌に挿絵を提供していたりしたようです。

カラーリトグラフ印刷の普及でイラストレータとして活躍

カラーリトグラフ(石版印刷)全盛時代・ポスターなどにイラストレーションも多用された

カラーリトグラフ(石版印刷)全盛時代・ポスターなどにイラストレーションも多用された

ベルリンの美術学校で学んだカタリーナ・クレインはイラストレーターとしてのキャリアをスタートさせます。

当時はカラーリトグラフ(※3)の全盛期だったようで、ポスターの黄金期とも言われていたそう。リトグラフとは石板印刷のことで、19世紀頃は一般的な印刷方法だったみたいですね。それを多色刷り可能に進化させたものがカラーリトグラフ(クロモリトグラフ)と呼ばれる印刷技術だそうです。現在のオフセット印刷で使われるCMYK4色ではなく、最大16色まで使えた印刷で当時としては最も高度で多用されたそうです。そういった事からポスターが大量に印刷されていたんですね。

ポスターの他にも絵葉書がたくさん作られていて、その絵柄を描くイラストレーターの仕事に一定の需要があったんですね。写真を使った絵葉書も多々ありそうですが、当時は解像度の高い写真を大量印刷することはまだ少し大変で、イラストレーションが使われる機会も多かったらしいんですね。そこでカタリーナ・クレインのような画家に需要があったということみたいです。

2000点以上の絵を商業用に描いた

2000点以上の絵を商業用に描いた

ベルリンにスタジオを構えて数社の出版社と契約し2000点以上のポストカード用の絵を描いたそうです。これだけ受注できるのですから、とても才能に溢れた画家ということですね。

使う画材は油絵か不透明な水彩絵具を使っていたみたいです。モチーフは花や果物、鳥や庭などを描いていたそうですね。19世紀は写真技術も発達してきた頃で、絵画も写実にこだわらずいろんな画風が生まれてきたであろう時代。そんな中で彼女の絵を見てみると写実主義・自然主義の画家であることが分かります。写実主義・自然主義とは自然にあるまま、見たままを写実的に描く画家の総称です。そして印象派と呼ばれる人たちとも若干違うような感じでもあります。

鳥や静物など、自然物を写実的に描く 筆に迷いがなく描くスピードも早かったのではないかと推察される

鳥や静物など、自然物を写実的に描く 筆に迷いがなく描くスピードも早かったのではないかと推察されます

ポストカードやグリーティングカードに使われる絵柄って、基本的に写実画が多いですよね。抽象画はほぼ見ない気がします・・。やっぱり人に送るものだから季節感や自然をダイレクトに感じられるような絵柄が昔から好まれたんでしょうね。季節感や植物の美しさなどを共感したい気持ちもありますし。そういった部分でも才能を発揮した画家と言えそうです。

とにかく彼女の描く絵柄は人気を博し、彼女自身の生計を支えたそうです。

画業で生計を立て、女性の指針となる存在だった

ポストカードなどの商業用の絵を描く画家はあまり評価されない時代

ポストカードなどの商業用の絵を描く画家はあまり評価されない時代

西洋美術は長い間、聖書のワンシーンを描くような宗教画を描く画家が評価される傾向にあったらしく、植物画はあまり評価が高くなかったそうです。そういった意味では薔薇のラファエロと評されるルドゥーテも美術界からはそこまでの評価を得られなかったと聞いたことがあります。

加えてカタリーナ・クレインは雑誌やポストカード用に絵を描くことが基本の「商業画家」だ、という事で、芸術界からはあまり評価されなかったらしいです。当時は芸術と商業は切り離されているべき、という考え方が根強いんですかね。加えての男性社会ということで独身で生きる女性はめずらしかったらしいですが、それでも自分の画業で生計を立てていた事は当時としても偉業とされているそうです。

彼女のように生きたい女性たちに向けてワークショップを行った

彼女のように生きたい女性たちに向けてワークショップを行った

また彼女は彼女のようなキャリアを得たい若い女性たちのためにワークショップを開いていたそうです。こういう所は現在とあまり変わっていないかもしれませんね。女性のキャリア形成の指針としての影響力がある人は現代でも散見されますが、19世紀を生きた彼女もそのうちのひとりだったんでしょうね。

68歳でベルリンで死去。残念ながら彼女の原画は第2次大戦でほとんど消失したそうです。現在僕たちの目に届いている彼女の絵は、そのほとんどがポストカードやグリーティングカード用に印刷されたものという事ですね。

彼女の素晴らしい原画、1度見てみたいものです。

※1「Journal des roses / ローズダイアリー」

2人のバラ栽培家が作ったフランスの月刊誌。薔薇の品種や栽培プロセス、展示会などのレポートを掲載。

※2「Rosen-Zeitung / ローゼンツァイトゥング」

(1886年から1933年に発行され、1991年から1993年に再発行された)バラの分野に特化したドイツのジャーナル。

※3「Chromolithographie / クロモリトグラフ」

別名カラーリトグラフ、石板印刷(リトグラフ)を進化させた印刷技法。CMYK4色ではなく最大16色を使用した多色刷りリトグラフは当時の流行りで多くの美術様式のポスターが制作された。この技術が使われていた19世紀後半の時代は「ポスターの黄金時代」と言われている。

【参考】

  • https://de.m.wikipedia.org/wiki/Catharina_Klein
  • https://www.fineartphotographyvideoart.com/2014/12/Catherine-Klein.html
  • https://therosarianlibrary.co.uk/stories/the-commercial-appeal-of-the-roses-of-catharina-klein-1861-1929/
  • https://therosarianlibrary.co.uk/snippets/

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