
カリグラフィーの人気書体のひとつといえばポインテッドペンで書くカッパープレート書体がありますが、なんかカッパープレートに似てるけどちょっと違う書体があるな〜と思ったことありませんか??
それが(おそらく)スペンサリアン書体です。
ポインテッドカリグラフィーって大きく分けて「カッパープレート書体」と「スペンサリアン書体」の2つがあるんですよね。
スペンサリアン書体ってどんな感じの書体なの?と疑問に思った人に向けてまとめてみました。それではいってみましょう。
contents
スペンサリアン書体って?

スペンサリアン書体
カリグラフィーは16世紀頃から写本の需要が少なくなり銅版印刷とポインテッドペンで書くビジネスライティングが主流になってきました。
ビジネスライティング書体はカッパープレート書体がその役割を担ってきましたが、19世紀頃に開発されたスペンサリアン書体は、それをさらに機能的に進化させた書体といえそうで、多くの書類などのビジネスライティングに使われたそうです。
学校の英語の授業で筆記体の書き方を習った人もいると思いますが、アレの元祖みたいな感じなんですかね??
スペンサリアン書体はアメリカで作られていて、基本の形というのはもちろんありますが、いろんなバリエーションの書き方のテキストがあって、イギリスで作られたカッパープレート書体よりも自由度の高い書体というイメージです。
スペンサリアン書体の教育者
プラット・ロジャー・スペンサー

スペンサリアン書体の生みの親 スペンサー
スペンサリアン書体は19世紀頃にプラット・ロジャース・スペンサー(Platt Rogers Spencer)という人がカッパープレート書体を元に開発したって言われています。

スペンサーの丸太小屋学校
スペンサーは1800年くらいの生まれだそうですね。写真のような丸太小屋の学校でスペンサリアン書体を全国の学生に教えていたそうです。こんな所から始まっているんですね。
全然関係ないかもですが、以前、吉田松陰の「松下村塾」を山口県まで実際に見に行ったことがあるんですが、まさにこんな感じの場所でしたね。(※吉田松陰は後に明治という時代を築きあげる事になる幕末の優秀な維新志士たちを多く育てた思想家・革命家)
正直「こんな小さいの??」と思いました。やっぱりなんでも最初は小さな場所から始まるんですね。
マイケル・サル
現代のスペンサリアン書体の教育者として有名なのがマイケル・サル(michaelr sull)という人です。以前日本でもワークショップを行ったそうですね。
ホントは自分も参加したかった・・・泣 ちょっと諸々で僕は参加してませんが・・現役の人なので、本人のインスタグラムや、YouTubeなんかでも彼の文字や活動を見ることができます。
なんかビジュアルがオシャレでキャラクター化されていますね。丸メガネと蝶ネクタイが特徴的です。ワークショップに参加した知人から聞いた話では、スペンサリアン書体は割と自由に書ける書体なんですって。
カッパープレート書体はポインテッド書体としては、どちらかというとイギリス的、伝統的?っていうんですかね・・なのでアメリカ人の彼はカッパープレート書体はあんまり好きじゃないと聞いたことがあります。書体にも歴史背景があって感じ方も人それぞれで面白いですね。
スペンサリアン書体の特徴
スペンサリアン書体はどんな文字の特徴を持っているのでしょうか??カッパープレート書体と比較しながら見ていきます。
ストロークの特徴
カッパープレート書体のストローク

カッパープレート書体
カッパープレート書体のストロークは基本的に綺麗な楕円を描いていくイメージです。カッパープレート体の形ってとても綺麗な構成になっていてある意味完成されています。なのであんまりカクカクしたようなストロークは見当たりません。
スペンサリアン書体のストローク

スペンサリアン書体のストローク
一方でスペンサリアン体のストロークはカクカクしてます。カクカクって言い方が合ってるか分かりませんが、次の文字へ繋ぐストロークがシャキッ、シャキッっと尖っているイメージですね。
なんでこんな形かというと、この方が早く書けるためだと思います。綺麗な楕円を描くように書くよりも、シャッシャッっとスペルを繋いでいった方が書くのが早いんですね。カッパープレート体は一定のスピードで書いていくのに対して、スペンサリアン体は「えいっ!えいっ!」って書いて(?)いく感じです。
スペンサリアン独特のリズム感を持って書いていくイメージですね。
シェードの位置
ポインテッドペンで書くカリフラフィーは筆圧の強弱によって線の太さを変えながら書いていきます。シェードというのは線が太くなってる部分ですね。
カッパープレート書体のシェード

カッパープレート書体のシェード
カッパープレート書体を見てみると、文字の真ん中部分が太くなっていてシェードの位置が大体センターに来ていることがわかります。
スペンサリアン書体のシェード

スペンサリアン書体のシェード
対してスペンサリアン書体のシェードはセンターからずれていて、上側と下側に別れてついていますね。要は書き始めと書き終わりの位置にシェードがくるようになっています。ちょっと不思議な形ですがなんでこうなっているかというと・・・
ポインテッドペンで線を引くときって基本的に細い線を引く時の方がスピードが遅くて、筆圧を強くしてシェードをかける時の方が早いスピードで書けるんですよね。細い線を引くには筆圧を弱くして書かなければいけないので、比較的にゆっくりになりがちなんですね。
シェードがセンターにくるカッパープレート体はシェードをかけてから、また筆圧を弱くして細い線を引かなければいけません。この時にペンスピードが減速してるんですね。
スペンサリアン体はこの手間を省くために、書き終わりの位置にシェードが来るように設計されているのだと思います。書いてる途中で減速する必要がないんですね。こうする事でより文字を早く書けるようになってる、という事なんだと思います。
オフハンドフローリッシュとは?
ペンで描く美しい絵柄

オフハンドフローリッシュ
スペンサリアン書体は割と自由に書けるイメージの書体だと言いましたが、カッパープレート書体と同様にフローリッシュと呼ばれる自由な飾り線をつけられるのもその理由のひとつではあります。
フローリッシュは線ですが、オフハンドフローリッシュってものがあって、これを文字と一緒にデザインすることで、さらに自由度が広がるんですよね。
オフハンドフローリッシュがどんなものかというとこんな感じのもの。ポインテッドペンで描く絵柄ですね。植物や鳥など自然の有機的で美しいものを単線で表現する技術です。
オフハンドフローリッシュを描くのにオススメのニブ(ペン先)
ポインテッドペンで書くカリフラフィーはジロット303なんかのペン先を良く使ったりするんですけど、このペン先はアップストロークの引っかかりが強くて長いストロークを書くのにはあまり向いていません。
オフハンドフローリッシュみたいな長めのストロークを描いていくには、比較的硬めで、あまり引っかかりが少ないニブ(ペン先)を選ぶと良いと思います。個人的なオススメは以下です。
日光Gペン(NikkoG)

日光Gペン
日光Gペンは日本のメーカー「立川ピン製作所」が作っているニブで、漫画家の人たちなんかも使ってるんですかね?? このペンはちょっと硬めで引っかからないので絵柄を描くのにはオススメです。また値段も安いので買いやすいですね。近くの画材屋さんなんかに売ってると思います。
硬めなのでカリグラフィー文字は書きづらいっていう人もいるかもなので、文字とオフハンドフローリッシュの絵柄を別のペンで分けて書くのもアリかもしれません。
プリンシパル

プリンシパル
プリンシパルは少しお値段が張りますがジロット303などのニブに比べてアップストロークの引っかかりが少ないのが特徴です。ニブとしては若干柔らかめですが、文字と絵柄を一緒のペン先で描きたい場合はこのペン先も選択肢の一つかな?と個人的には思いました。
まとめ
というわけでスペンサリアン書体についてまとめてみました。
カッパープレート書体に比べるとまだメジャーとは言えず、日本人でこの書体を書きなしている、という人も少ない印象です。また美しく書くのがカリグラフィー の定義なため、写本カリグラフィーに比べてビジネスライティングに特化したこの書体は本筋のカリグラフィーではない、というような人もいるみたいで、書体の捉え方は人それぞれですね。
個人的には素敵な書体だな〜と思います。
割と後期に作られた書体なので、探せばテキストとかいっぱいありそうなので、研究してみると面白いかもしれませんね。それでは〜。